7-2 Claude Code で KPI ダッシュボードを作る
売上や問い合わせ数のCSVから、Chart.js を使ったグラフ付きHTMLダッシュボードを Claude Code に作らせる方法を解説。見たい指標の整理、グラフの選び方、月次更新の運用、Excelグラフとの使い分けまで紹介します。
このレッスンでわかること
「毎月の売上と問い合わせ数を、パッと見てわかる形にしたい」「経営会議のたびに Excel でグラフを作り直すのが面倒」——数字を扱う仕事をしていれば、一度は感じたことがあるはずです。
Claude Code は、CSV ファイルを読み込んで、グラフ付きの HTML ダッシュボードを生成できます。ブラウザで開くだけで見られる1枚のページに、売上の推移、問い合わせ数の棒グラフ、達成率のカードが並ぶ——そんなものが、専用ツールを契約しなくても作れます。
このレッスンで身につくのは次の3点です。
- ダッシュボードを作る前に「見たい指標」を紙で整理する習慣
- グラフの種類(折れ線・棒・円)の選び方と指示の仕方
- 月次更新の運用(データ差し替え→再生成)と Excel グラフとの使い分け
道具を作ること自体よりも、「何を見たいかを先に決める」ことがこのレッスンの核心です。
仕組み:CSV から HTML ダッシュボードができるまで
Claude Code に「このCSVからダッシュボードを作って」と頼むと、おおむね次の流れで処理されます。
- CSV を読み込み、列の構成(日付・売上・問い合わせ数など)を把握する
- 必要なら Python(pandas など)で集計する(月別合計、前月比など)
- グラフ描画ライブラリ(Chart.js が代表的)を使った HTML ファイルを生成する
できあがるのは dashboard.html のような1個のファイルです。ダブルクリックすればブラウザで開け、社内の共有フォルダに置けばツール代ゼロで共有できます。サーバーもデータベースも不要です。
Chart.js は Web ページにグラフを描くための定番の無料ライブラリで、折れ線・棒・円など主要なグラフを一通り描けます。とはいえ、あなたが Chart.js を学ぶ必要はありません。「折れ線グラフで」「棒グラフで」と日本語で指定すれば、Claude Code が適切に使ってくれます。
作る前に紙で考える:見たい指標の整理
ダッシュボード作りで一番多い失敗は、「とりあえず全部の数字をグラフにして」と頼んでしまうことです。グラフが10個並んだページは、一見立派ですが、結局誰も見なくなります。
作る前に、紙でもメモアプリでもいいので、次の3つの問いに答えてください。
- 誰が見るのか:自分用か、上司への報告用か、チーム共有用か
- 何を判断したいのか:「先月より良くなったか」「目標に届きそうか」など
- そのために必要な数字は何か:判断に直結する3〜5個に絞る
たとえば「月次の営業会議で進捗を確認する」のが目的なら、必要なのは「月別売上の推移」「目標達成率」「問い合わせ数の推移」くらいで十分です。逆に、判断に使わない数字は思い切って外します。ダッシュボードは数字の置き場ではなく、判断を速くするための道具です。
この整理ができていれば、Claude Code への指示は驚くほど簡単になります。
グラフの種類の選び方
グラフ選びには定石があります。迷ったら次の対応表に従ってください。
| 見たいもの | 適したグラフ | 例 |
|---|---|---|
| 時間による変化 | 折れ線グラフ | 月別売上の推移 |
| 項目どうしの比較 | 棒グラフ | 商品別・担当者別の売上 |
| 全体に占める割合 | 円グラフ | 流入チャネルの構成比 |
| 目標との対比 | 数値カード+達成率 | 今月の売上と達成率○% |
ひとつ実務的な助言をすると、円グラフは項目が5個を超えると読みにくくなるので、その場合は棒グラフに切り替えたほうが伝わります。また「とにかく推移が見たい」場面が大半なので、迷ったら折れ線グラフが無難です。
指示するときは「売上は折れ線で、商品別比較は棒で」のように、指標とグラフの対応を明示します。指定しなくても Claude Code が妥当に選んでくれることが多いですが、自分で選べると仕上がりのコントロールが効きます。
Bad例とGood例で見る、ダッシュボードの頼み方
Bad例:
sales.csv でいい感じのダッシュボードを作って
「いい感じ」の中身が空っぽです。何のグラフが何個できるかは運任せで、判断に必要な数字が入っている保証もありません。
Good例:
sales.csv から、月次報告用の HTML ダッシュボードを作ってください。
【データの説明】
- 列: 日付, 商品名, 売上金額, 問い合わせ数
- 期間: 2025年1月〜2026年5月の日次データ
【表示したいもの】
1. 月別売上の推移(折れ線グラフ)
2. 直近月の商品別売上(棒グラフ、多い順)
3. 月別問い合わせ数の推移(折れ線グラフ、1と同じ並び)
4. ページ上部に数値カード: 直近月の売上合計と、目標1,000万円に対する達成率
【ルール】
- グラフは Chart.js を使い、dashboard.html の1ファイルにまとめる
- 集計に使った月別合計の数値を、生成後にテキストでも報告する
- 元の sales.csv は変更しない
【成果物】
- dashboard.html(ブラウザで開いて確認できる状態)
注目してほしいのは【データの説明】と「集計値をテキストでも報告する」の2点です。
列の構成を先に伝えると、Claude Code がデータの中身を誤解するリスクが減ります。そして集計値の報告は、前章のデータ整理で学んだ「検証させる」習慣のダッシュボード版です。グラフは見た目がもっともらしいぶん、集計ミスに気づきにくいもの。報告された月別合計を、元データや Excel の合計と1か所でも突き合わせてから信頼してください。
月次更新の運用:データ差し替え→再生成
ダッシュボードは一度作って終わりではなく、毎月更新してこそ価値があります。運用はシンプルで、次の2ステップです。
- 最新データを含む CSV を同じファイル名・同じ列構成で上書き(または追記)する
- Claude Code に「sales.csv が更新されたので、前回と同じ仕様で dashboard.html を再生成して」と頼む
さらに安定させたいなら、初回生成のときにこう頼んでおく方法があります。
今後毎月更新するので、CSV を読み込んで dashboard.html を生成する処理を
Python スクリプト(make_dashboard.py)として保存してください。
スクリプトとして残しておけば、翌月は「make_dashboard.py を実行して」だけで済み、毎回ゼロから作るより速く、仕様のブレもなくなります。これは3章で学んだ「道具そのものを作らせる」発想の応用です。
運用上の注意がひとつ。列の名前や構成を変えないことです。「売上金額」の列名を「売上」に変えただけでスクリプトは動かなくなります。変えたい場合は、その旨を伝えてスクリプトも更新してもらいましょう。
Excel グラフとの使い分け
「Excel でもグラフは作れるのに、わざわざ HTML にする意味は?」という疑問はもっともです。使い分けの目安を挙げます。
Excel が向いている場面:
- その場で1回だけ見たい、使い捨てのグラフ
- グラフを作る本人が Excel に慣れていて、データも小さい
- 提出先が「Excel ファイルでの提出」を求めている
Claude Code + HTML ダッシュボードが向いている場面:
- 毎月同じ形式で更新する定例レポート(再生成が一瞬で終わる)
- 複数のグラフと数値カードを1画面に整理して見せたい
- 元データが数万行あり、Excel の操作が重くなってきた
- グラフ作成の手順を属人化させたくない(スクリプトに手順が残る)
要するに、単発なら Excel、繰り返すなら Claude Code が基本の判断軸です。両方を併用し、「日常は HTML ダッシュボード、役員への提出時だけ Excel に転記」といった運用も現実的です。
やってみよう
演習1(指標の整理):自分の仕事で毎月見ている(または見るべき)数字を書き出し、「誰が・何を判断するためか」を添えて3〜5個に絞ってください。ダッシュボードの設計図はこのメモがすべてです。
演習2(ダミーデータで一周する):Claude Code に「日付・商品名・売上金額・問い合わせ数の列を持つ、18か月分のダミー売上CSVを作って」と頼み、続けて Good 例の形式でダッシュボードを生成させましょう。ブラウザで開いて、報告された集計値とグラフが一致しているか確かめてください。
演習3(更新の体験):演習2のCSVに「1か月分のデータを追加して」と頼み、その後ダッシュボードを再生成させましょう。グラフに新しい月が増えていれば、月次運用の流れを体験できたことになります。
まとめ
- Claude Code は CSV から Chart.js などを使ったグラフ付き HTML ダッシュボードを生成できる
- 作る前に「誰が・何を判断するために・どの数字を見るか」を紙で整理し、指標は3〜5個に絞る
- グラフの定石: 推移は折れ線、比較は棒、構成比は円(5項目まで)、目標対比は数値カード
- 集計値をテキストでも報告させ、元データと突き合わせてから信頼する
- 月次運用は「同じ列構成でCSVを差し替え→再生成」。スクリプト化すればさらに安定する
- 使い分けの軸は「単発なら Excel、繰り返すなら Claude Code」
理解度チェック
Q1. KPI ダッシュボードを作るとき、最初にやるべきこととしてもっとも適切なものはどれでしょう?
- CSV にあるすべての列をグラフ化するよう指示する
- 誰が何を判断するためのものかを整理し、表示する指標を3〜5個に絞る
- もっとも見栄えのするグラフライブラリを調査する
- まず Excel で同じグラフを作って比較する
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正解: 2
ダッシュボードは判断を速くするための道具です。目的と読み手から逆算して指標を絞ることが、作成前の最重要ステップです。全列のグラフ化(選択肢1)は「誰も見ないダッシュボード」になる典型的な失敗パターンです。
Q2. 「月別売上の推移」を見せるグラフとして、定石にもっとも合うものはどれでしょう?
- 円グラフ
- 折れ線グラフ
- 散布図
- 数値の一覧表のみ
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正解: 2
時間による変化(推移)を見せるなら折れ線グラフが定石です。円グラフは全体に占める割合、棒グラフは項目どうしの比較に向いています。迷ったときも、推移であれば折れ線を選んでおくのが無難です。