3-3 Claude Code で Excel・CSV のデータ整理を自動化する
表記ゆれの統一・重複削除・列の分割結合・集計など、実務で頻出するデータ整理を Claude Code に任せる方法を解説。バックアップと件数検証を組み込んだ安全な指示テンプレートも紹介します。
このレッスンでわかること
「顧客リストの会社名の表記がバラバラ」「同じ人が2回登録されている」「氏名の列を姓と名に分けたい」——こうしたデータ整理は、地味なのに時間を奪う代表的な仕事です。手作業でやると数時間、しかも目視チェックではミスが残ります。
前のレッスンで学んだとおり、Claude Code は Python スクリプトを書いて実行することで Excel(xlsx)や CSV を処理できます。この能力を使えば、データ整理の大部分を任せられます。
このレッスンで身につくのは次の3点です。
- 実務でよくあるデータ整理タスク4種類の頼み方
- 元データを守る「バックアップを取らせる」習慣
- 結果を信頼するための「件数検証(before/after)」をさせる指示
特に後半の2つは、AIにデータを触らせるうえでの安全運転の技術です。ここを身につけると、安心して実務データを任せられるようになります。
Claude Code に任せられるデータ整理タスク
実務で頻出するデータ整理は、おおむね次の4つに分類できます。
| タスク | 例 |
|---|---|
| 表記ゆれの統一 | 「(株)」「株式会社」「㈱」を「株式会社」に統一する |
| 重複の削除 | 同じメールアドレスの行が複数あれば1行に絞る |
| 列の分割・結合 | 「氏名」を「姓」「名」に分ける。「都道府県」と「市区町村」を結合する |
| 集計 | 担当者別・月別の売上合計を別シートにまとめる |
どれも Excel の関数や手作業でもできますが、件数が数百行を超えたり、毎月繰り返したりするなら、Claude Code に任せたほうが速く、正確です。
仕組みは前レッスンの復習です。Claude Code は xlsx や CSV を Python スクリプト(pandas や openpyxl などのライブラリ)で読み込み、加工し、書き出します。あなたがプログラムを理解する必要はありません。「何を・どうしたいか」を日本語で正確に伝えることに集中してください。
大原則1:元ファイルのバックアップを取らせる
データ整理を頼むときの鉄則は、元ファイルを直接上書きさせないことです。AIの処理が期待どおりでなかったとき、元データが残っていれば何度でもやり直せます。残っていなければ取り返しがつきません。
方法は簡単で、指示に1行加えるだけです。
処理を始める前に、元ファイルを backup フォルダにコピーしてください。
あるいは、元ファイルには触れず、結果を別名で保存させる方法もあります。
元の customers.xlsx は変更せず、処理結果は customers_cleaned.xlsx として
別ファイルに保存してください。
どちらでも構いませんが、慣れないうちは両方指定しておくと万全です。「バックアップを取り、結果は別名保存」。この一手間が、データ仕事の安心感をまるごと変えてくれます。
大原則2:件数検証(before/after)をさせる
もうひとつの鉄則が、処理の前後で件数を報告させることです。たとえば重複削除なら、こう指示します。
処理前の行数、削除した行数、処理後の行数を必ず報告してください。
「処理前 − 削除 = 処理後」が一致することも確認してください。
なぜこれが重要なのでしょうか。データ処理の失敗は「エラーで止まる」とは限らず、静かに行が消えたり増えたりする形で起きることがあるからです。たとえば「重複削除のつもりが、空欄行まで全部消えていた」というような事故です。件数の検証をルール化しておけば、こうした異変に必ず気づけます。
報告の例はこんなイメージです。
処理前: 523行
重複として削除: 18行
処理後: 505行(523 − 18 = 505 で一致)
数字が合わない、削除件数が想像より多い、と感じたら、その場で「削除した18行の内容を見せて」と確認できます。この「検証つきで仕事をさせる」発想は、データ整理に限らず Claude Code 活用全般で役立つ考え方です。
Bad例とGood例で見る、データ整理の頼み方
実際の指示を比べてみましょう。題材は「顧客リストの整理」です。
Bad例:
customers.xlsx をきれいにして
この指示の問題点は3つあります。「きれい」の基準が不明であること、バックアップの指示がないこと、検証の指示がないことです。Claude Code なりに解釈して作業はしてくれますが、何がどう変わったのか後から追えません。
Good例:
customers.xlsx のデータを整理してください。
【事前準備】
- 元ファイルを backup フォルダにコピーする
- 結果は customers_cleaned.xlsx として別名保存する(元ファイルは変更しない)
【やってほしいこと】
1. 「会社名」列の表記ゆれを統一する
(「(株)」「㈱」→「株式会社」、全角・半角スペースの混在を半角に統一)
2. 「メールアドレス」列が同じ行は重複とみなし、最初の1行だけ残す
3. 「氏名」列を「姓」「名」の2列に分割する(スペース区切り。
分割できない行はそのまま残し、行番号を報告する)
【検証】
- 処理前後の行数と、重複として削除した行数を報告する
- 「処理前 − 削除 = 処理後」の一致を確認する
- 表記ゆれを修正した件数も項目ごとに報告する
長く見えますが、構造は「事前準備(安全策)→ やってほしいこと(具体的な変換ルール)→ 検証(数字の確認)」の3部構成で一定です。一度この形を作れば、次回からは中身を差し替えるだけで使い回せます。
注目してほしいのは「分割できない行はそのまま残し、行番号を報告する」という部分です。実データには必ず例外(スペースのない氏名、外国人名など)が混ざっています。例外をどう扱うかを先に決めて伝えると、AIが勝手な判断をする余地が減ります。決めかねる場合は「例外があれば処理前に私に質問して」と書いておくのも良い方法です。
集計を頼むときの指示例
整理が終わったデータからの集計も、そのまま頼めます。
customers_cleaned.xlsx を使って集計してください。
- 集計1: 業種別の顧客数を多い順に
- 集計2: 担当者別の顧客数と年間取引額の合計
- 成果物: summary.xlsx に集計1・集計2を別シートで保存
- 検証: 集計した顧客数の合計が元データの行数と一致することを確認して報告
ここでも検証を忘れずに入れています。「業種別の顧客数を全部足したら元の行数になるはず」という当たり前のチェックが、集計ミスの検出に効きます。
繰り返し使える指示テンプレート
このレッスンの内容を、穴埋め式のテンプレートとしてまとめます。毎月のデータ整理など定例業務では、これをメモ帳に保存しておき、ファイル名と処理内容だけ書き換えて使ってください。
〇〇.xlsx(または .csv)のデータを整理してください。
【事前準備】
- 元ファイルを backup フォルダにコピーする
- 結果は 〇〇_cleaned.xlsx として別名保存する(元ファイルは変更しない)
【やってほしいこと】
1. (表記ゆれの統一: 「A」「B」→「C」に統一 など、変換ルールを具体的に)
2. (重複削除: どの列が同じなら重複とみなすか)
3. (列の分割・結合: 何をどう分ける/つなげるか、区切り文字は何か)
【例外の扱い】
- ルールどおり処理できない行は変更せず残し、行番号を報告する
- 判断に迷うケースがあれば、処理前に私に質問する
【検証】
- 処理前後の行数と、変更・削除した件数を項目ごとに報告する
- 「処理前 − 削除 = 処理後」の一致を確認する
定例業務であれば、さらに一歩進めて「この処理を毎回実行できる Python スクリプトとして保存して」と頼む手もあります。前レッスンで学んだ「道具そのものを作らせる」発想です。一度スクリプト化すれば、翌月からは「先月作った cleanup.py を今月のファイルに実行して」で済みます。
やってみよう
演習1(安全策の練習):前レッスンの演習で作ったダミーデータ(または適当なCSV)に対し、「バックアップ+別名保存+件数報告」を入れた指示で重複削除を頼んでみましょう。報告された数字が合っているか自分でも確かめてください。
演習2(表記ゆれの統一):「(株)テスト商事」「株式会社テスト商事」「㈱テスト商事」のような表記ゆれを含むダミー顧客リストを Claude Code に作らせ、その後で統一処理を頼んでみましょう。「作らせて、整理させる」の一連を体験するのが目的です。
演習3(テンプレートの自分用カスタマイズ):本文のテンプレートをメモ帳にコピーし、自分の実務で毎回発生するデータ整理(経費データ、名簿、アンケート結果など)に合わせて【やってほしいこと】を書き換えた「マイテンプレート」を作りましょう。
まとめ
- 表記ゆれの統一・重複削除・列の分割結合・集計は、Claude Code に任せられる定番タスク
- Claude Code は Python スクリプトを書いて実行することで Excel/CSV を処理する(プログラム知識は不要)
- 鉄則1: 元ファイルは直接上書きさせない。「バックアップ+別名保存」を指示に組み込む
- 鉄則2: 処理前後の件数を報告・検証させる。データの異変に必ず気づける仕組みを作る
- 例外データの扱い(残す・報告する・質問させる)を先に決めて伝える
- 「事前準備→やってほしいこと→例外→検証」のテンプレートを作れば、定例業務で使い回せる
理解度チェック
Q1. Claude Code にデータ整理を頼むときの安全策として、もっとも適切な組み合わせはどれでしょう?
- 処理が速くなるよう、元ファイルへの直接上書きを指示する
- バックアップを取らせたうえで、結果は別名ファイルに保存させる
- AIを信頼して、検証の報告は省略させる
- 元ファイルを手作業で印刷してから頼む
解答を見る
正解: 2
元ファイルが残っていれば、処理が期待と違っても何度でもやり直せます。「バックアップを取り、結果は別名保存」の二段構えが基本です。検証報告(選択肢3)も省略せず、必ずさせるべきものです。
Q2. 重複削除を頼んだところ「処理前 523行 → 処理後 505行」と報告されました。次に取るべき行動として、もっとも適切なものはどれでしょう?
- 報告された削除件数(18行)と差し引きが一致しているか確認し、必要なら削除された行の内容を見せてもらう
- 行数が減っているのでエラーと判断し、すぐ元に戻させる
- AIの処理は常に正しいので、確認せずに次の作業へ進む
- 自分で523行を1行ずつ目視チェックし直す
解答を見る
正解: 1
重複削除では行数が減るのは正常です。大事なのは「処理前 − 削除 = 処理後」の数字が合っているかの確認と、削除件数が想定と大きくずれていないかの感覚チェックです。気になる場合は「削除した行の内容を見せて」と頼めば、その場で中身を確認できます。