Workspace のカスタム指示が Drive / Chat / Slides / Sheets / Gmail へ — 管理者制御は無い
Google が、Gemini のカスタム指示の対応範囲を Google ドキュメント以外へ広げた。新たに Drive の Ask Gemini、Chat の Ask Gemini、そして Slides / Sheets / Gmail の Gemini サイドパネルで有効になる。カスタム指示はやりとりを個別化する継続的な設定で、一度書けばアプリをまたいで持続するため、同じトーンや出力形式の指示を各アプリで書き直す必要がなくなる。ドキュメント向けには 2026-05-04 に提供されていた機能の適用先拡大にあたる。ロールアウトは 2026-09-02 から段階的で、Rapid Release と Scheduled Release の両ドメインとも機能が見えるまで最大15日。対象は当該機能にアクセスできるすべての Workspace 顧客。管理者向けの制御は存在せず、エンドユーザー単位でのみ動作する。設定は「設定 > パーソナライズ」から管理する。
ニュース原文を読む ↗要約
2026-09-02、Google が Gemini のカスタム指示(custom instructions)の対応アプリを拡大しました。
カスタム指示は、やりとりを個別化するための継続的な設定です。 トーン、文体、出力形式といった指示を保存しておくと、毎回の会話で同じことを書き直さなくて済みます。 Google ドキュメント向けには 2026-05-04 に提供されていた機能で、今回はその適用先の拡大です。
新たに対応するのは5か所。 Drive の Ask Gemini、Chat の Ask Gemini、そして Slides / Sheets / Gmail の Gemini サイドパネルです。
重要なのは、設定がアプリをまたいで持続する点です。 一度書いた指示が、Drive でも Chat でも Gmail でも効きます。アプリごとに同じ内容を設定し直す必要はありません。
ロールアウトは 2026-09-02 から段階的で、Rapid Release ドメインと Scheduled Release ドメインのいずれも、機能が見えるまで最大15日かかるとされています。
対象は、Ask Gemini in Drive、Ask Gemini in Chat、対象アプリの Gemini サイドパネルにアクセスできるすべての Google Workspace 顧客です。エディションの個別列挙はありません。
そして、この発表で見落としてはいけない一行があります。
管理者向けの制御は存在しません。 エンドユーザー単位でのみ動作します。
設定は、サイドパネルや Ask Gemini のツールから、または 設定 > パーソナライズ から管理します。
何が変わったか
- カスタム指示が Drive / Chat の Ask Gemini、Slides / Sheets / Gmail の Gemini サイドパネルでも有効に
- 設定はアプリをまたいで持続(アプリごとの再設定は不要)
- ドキュメント向け(2026-05-04 提供)からの適用先拡大
- ロールアウトは 2026-09-02 から段階的、両リリース系統とも最大15日
- 対象: 当該機能にアクセスできるすべての Workspace 顧客
- 管理者制御なし。エンドユーザー設定のみ
- 管理場所: サイドパネル / Ask Gemini のツール、または
設定 > パーソナライズ
業務インパクト(一般企業向け)
利用者から見れば、素直に便利な変更です。
アプリごとに同じ指示を書いていた手間が消えます。 「箇条書きで」「敬体で」「結論を先に」——こうした好みを、Drive でも Gmail でも Slides でも一度書けば済むようになります。地味ですが、毎日効く種類の改善です。
しかし、管理側から見ると、話が変わります。
管理者制御が無い——これは、組織としてカスタム指示の内容を把握も統制もできないということです。
そして、適用範囲が広がったことで、この意味が重くなりました。
ドキュメントだけなら、影響は文書作成に閉じていました。 今回は Gmail が入っています。 メールの下書きに、個人が設定した指示が効くようになるということです。
具体的に何が起きうるか、考えてください。
ある担当者が「もっとカジュアルに、絵文字を使って」と設定する。 その指示は、社外向けメールの下書きにも効きます。 本人がその都度気づいて直せば問題はありませんが、設定は持続し、本人は設定したことを忘れます。
逆方向もあります。 「常に丁寧に、長めに」と設定した人が、社内チャットでも冗長な文章を生成し続ける。どちらも、悪意はなく、単に設定が広く効いているだけです。
管理者にできることは、実際のところ限られています。 制御が無いのですから、技術的に止める手段がありません。
できるのは、周知だけです。 そして、周知は有効です。
伝えるべきことは3点あります。 一つ、カスタム指示という設定が存在すること。二つ、それがアプリをまたいで効くこと。三つ、設定 > パーソナライズ で今の設定を確認・編集できること。
特に三つめが重要です。 「自分が何を設定しているか確認する場所」を知らせておけば、問題が起きたときに自力で直せます。 これは、制御できない機能に対する、現実的で有効な対処です。
外部向け文書を AI で下書きする運用があるなら、もう一段の注意が要ります。
カスタム指示は「見えないところで効く」設定です。 生成された文章を見ても、どの指示がどう効いたかは分かりません。 出力だけを見てレビューする体制だと、指示に起因する偏りは検出しにくい。
この種の「見えない前提」が増えたときの定石は、レビューの観点を変えることです。 「この文章は適切か」に加えて、「この文章は自分たちの標準的な書き方か」を見る。個人設定の影響は、標準との差として現れます。
ロールアウトが最大15日かかる点も、実務上は押さえておくべきです。
同じ組織の中で、使える人と使えない人が2週間ほど混在します。 「自分の環境では設定できない」という問い合わせは、不具合ではなく展開待ちである可能性が高い。サポート側は、この期間を把握しておくと問い合わせをさばきやすくなります。
副業・個人活用視点
個人利用の観点では、これは素直に使い倒すべき機能です。
カスタム指示の効きどころは、「毎回書いている指示」です。
自分が AI に対して繰り返し書いている言葉を、一度棚卸ししてみてください。 「箇条書きで」「前置きは要らない」「敬体で」「専門用語には説明を付けて」——繰り返しているものが、そのままカスタム指示の候補です。
これがアプリをまたいで効くようになったのは、実は大きい。 Drive で資料を探すときも、Gmail で返信を書くときも、Sheets で数式を相談するときも、同じ前提で応答が返ってくる。 道具の癖を覚え直さなくて済むという価値は、使ってみると分かります。
書き方のコツを一つ挙げるなら、「短く、少なく」です。
カスタム指示は、常に効きます。 つまり、書きすぎると、常に邪魔をします。 細かい条件を10個並べると、それが不要な場面でも適用され、出力が窮屈になります。
3つか4つ。 それも、ほぼすべての場面で成り立つものだけを入れる。個別の要求は、その都度プロンプトに書けば済みます。「常に真であること」だけを設定に置く——これが実用的な基準です。
副業で人に教える立場なら、ここは教材として使いやすい部分です。
カスタム指示は、効果が分かりやすく、設定が簡単で、失敗しても取り返しがつきます。 AI 活用研修の導入として、これほど扱いやすい題材は多くありません。
受講者に「あなたが毎回書いている指示は何ですか」と聞くところから始める。 出てきたものを整理して、3〜4つに絞り、実際に設定してもらう。その場で効果を体感できます。
そして、そこから「常に効く設定と、その都度の指示を分ける」という考え方に接続できます。 これはプロンプト設計の基礎であり、システムプロンプトと個別入力の分離という、より一般的な概念の入口でもあります。
注意点も一つ、伝えておくとよいでしょう。
設定は持続し、そして忘れられます。 半年前に設定した指示が、今も効いている。 出力が思ったものと違うとき、プロンプトを疑う前に設定を疑う——この習慣は、教えておく価値があります。
設定 > パーソナライズ を定期的に見に行く。 使わなくなった指示を消す。設定は書いたら終わりではなく、手入れするものだという感覚を持てるかどうかで、この機能の使い勝手はかなり変わります。