Cloudflare Agents SDK に web_fetch ツールが追加。Workers AI Markdown Conversion で Web・PDF・Office 文書をテキスト化し、長文は offset で分割して返す
Cloudflare Agents SDK に web_fetch ツールが追加された。エージェントが URL を指定して Web ページ・PDF・対応 Office 文書を読み込み、Workers AI Markdown Conversion でモデルが読めるテキストへ変換する。Markdown for Agents に対応したサイトには Markdown を直接要求する。モデルに返るのは本文、リダイレクト後の最終 URL、HTTP ステータス、content type の4点。長いページは分割して返り、各レスポンスに次の区間を要求する offset が含まれる。設定で許可ホスト・レスポンスサイズ上限・タイムアウト・リダイレクトの扱いを制御できるが、changelog にはオプション名の記載が無く docs に委ねられている。導入は Pi Durable harness が案内され、agents/webfetch/pi の webFetchTool を registry.install() で登録する。AI SDK / TanStack AI アダプタも同梱。モデルを介さないページ取得には fetchWeb() / windowWebFetchPage() / renderWebFetchPage() が使え、Durable Object もブラウザも不要。必要バージョンは Agents SDK v0.28.0 以降。価格・課金の記載は changelog に無い。
ニュース原文を読む ↗要約
Cloudflare Agents SDK に web_fetch ツールが追加されました。エージェントが URL を指定して、Web ページ・PDF・対応 Office 文書を読み込めます。
取得した内容は Workers AI Markdown Conversion でテキストへ変換されます。 これは Cloudflare が別途提供している文書変換機能で、HTML / PDF / Office 文書をモデルが読める Markdown に落とすものです。web_fetch はその上に乗っています。
Markdown for Agents に対応したサイトに対しては、Markdown を直接要求します。 Markdown for Agents は、サイト側が「エージェント向けに Markdown を返す」ことを宣言する仕組みで、Cloudflare は 2026-10-09 にこの変換をプロセス内で行う改善も出しています。対応サイトなら変換を挟まないという分岐が入っています。
モデルに返るのは4点です。
- ページ本文
- リダイレクト後の最終 URL
- HTTP ステータス
- content type
最終 URL が返るのは地味ですが実務的に重要です。 出典を記録するとき、リダイレクト前の URL を残すと後から辿れないことがあります。
長いページは分割して返ります。 各レスポンスに次の区間を要求するための offset が含まれ、モデルはそれを使って読み進めます。文脈長に収まらない文書を、モデル自身の判断でページングする構造です。
制御できる項目は4つです。 取得を許可するホスト、レスポンスサイズ上限、タイムアウト、リダイレクトの扱い。ただし changelog には「制御できる」とあるだけで、オプション名は書かれていません。 実際の指定方法は docs(developers.cloudflare.com/agents/tools/web-fetch/)側にあります。
導入は Pi Durable harness が正式な案内です。
import { webFetchTool } from "agents/webfetch/pi";
// harness ファクトリ内、Harness.open(...) より前
this.registry.install({
name: "web-tools",
tools: [webFetchTool({ binding: this.env.AI })],
});
どの harness でも動き、AI SDK / TanStack AI 向けアダプタも同梱されています。 さらにモデルを呼ばずにページを取得したい場合は、agents/webfetch の fetchWeb() / windowWebFetchPage() / renderWebFetchPage() が使えます。公式はこれらに Durable Object もブラウザも不要と明記しています。
必要バージョンは Agents SDK v0.28.0 以降です(同時に追加された web_search は v0.27.0 以降なので、両方使うなら 0.28.0 が実質の下限になります)。
価格・課金の記載は changelog にありません。 Workers AI Markdown Conversion を使う旨だけが書かれているため、その課金に従うと読むのが自然です。
何が変わったか
- Agents SDK に
web_fetchツールが追加された - 対応形式は Web ページ・PDF・対応 Office 文書
- 変換は Workers AI Markdown Conversion。Markdown for Agents 対応サイトには Markdown を直接要求
- モデルに返るのは本文・リダイレクト後の最終 URL・HTTP ステータス・content type
- 長文は分割され、各レスポンスに次区間の offset が入る
- 制御項目は許可ホスト・サイズ上限・タイムアウト・リダイレクト(オプション名は changelog に無く docs 側)
- 導入は Pi Durable harness(
agents/webfetch/piのwebFetchTool)。どの harness でも動作 - AI SDK / TanStack AI アダプタ同梱
- モデル不要の取得関数
fetchWeb()/windowWebFetchPage()/renderWebFetchPage()。Durable Object もブラウザも不要 - 必要バージョンは Agents SDK v0.28.0 以降
web_searchを併せて渡すと、検索結果をweb_fetchで読むようモデルへ指示される- 価格・課金の記載は無い
業務インパクト(一般企業向け)
この機能の実務的な分かれ目は、PDF と Office 文書が入っていることです。
エージェントに「社内の資料を読ませたい」という要件が来たとき、対象が HTML で置かれていることはほとんどありません。 見積書は PDF、仕様書は Word、集計は Excel。Web ページだけ読めるツールは、この要件に対して半分も届きません。 web_fetch が PDF と Office 文書を含んでいるのは、要件との距離を縮めます。
ただし「URL で取れるもの」に限られる点は押さえてください。 社内のファイルサーバや SharePoint にあるものは、URL と認証の整理が別途必要です。ツールが対応しているのは形式の問題で、到達性の問題ではありません。
次に、ページング(offset)の意味を実務に翻訳します。
長文が分割されて返るということは、モデルが「読み進めるかどうか」を判断するということです。 100ページの PDF を渡したとき、モデルが3区間で切り上げる可能性があります。それは必ずしも間違いではありません——必要な情報が前半にあればそれで足ります。ただし**「全部読んだ前提で結論を出している」と誤解すると危険です。契約書のレビューのように最後まで読まないと判断できない用途では、offset を使い切る制御を自分で書く**必要があります。公式はツールを提供していますが、読み切る保証はしていません。
3つ目は、許可ホストの設計です。
web_fetch は許可ホストを制御できます。これはエージェントが読む外部テキストの経路を縛る唯一の手段です。そして前述の通り、同時に追加された web_search と組み合わせると、モデルが読む URL は事前に分かりません。 検索結果を読ませるなら許可ホストは広く取らざるを得ず、縛りは実質的に効かなくなります。
この衝突は回避策のある問題ではなく、設計判断です。 整理すると2つの型に分かれます。
- 閉じた型: 許可ホストを社内ドメインや信頼済みの数件に限る。検索は使わない。権限のある操作(書き込み、送信、決済)を持たせてよい。
- 開いた型: 検索と併用し、公開 Web を読む。権限のある操作を持たせない。 出力は人のレビューを経る。
この2つを1つのエージェントに混ぜると、プロンプトインジェクションで権限が使われる経路ができます。 社内で運用するなら、エージェントの定義ファイルに「どちらの型か」を書かせるくらいの運用がちょうどいいです。
4つ目は、モデル不要の取得関数が実は使い所が広いことです。
fetchWeb() は Durable Object もブラウザも不要で、ページを Markdown にして返します。これは「エージェント」とは関係なく、単なる文書変換パイプラインとして使えます。 社内の資料を定期的に集めて Markdown に揃える、という前処理は RAG 構築で必ず発生します。そこに Workers AI Markdown Conversion を直接使える経路があるという読み方は、エージェントを作る予定がない組織にも効きます。
副業・個人活用視点
個人開発で効くのは、fetchWeb() の方です。
エージェントを作る話よりも先に、「URL を渡すと Markdown が返る関数」が Durable Object もブラウザも無しで使えるという点が実用的です。Playwright でヘッドレスブラウザを立てて本文を抜く処理は、書いたことがある人なら分かる通り保守が重い作業です。サイトの構造が変わるたびに壊れます。
案件で使える形は3つあります。
1つ目は、資料の下処理の受託です。 「社内の PDF 200本を検索できるようにしたい」という依頼で、最初の工程は必ずテキスト化です。ここを Workers AI Markdown Conversion に寄せれば、OCR やパーサの選定という沼を避けられます。成果物は「Markdown に揃った文書群」で、これ自体が納品物になります。
2つ目は、読み切りの保証を売ることです。 offset でページングされるということは、「最後まで読ませる」処理は自分で書く必要があるということです。契約書・仕様書・論文のように全体を読まないと使えない文書を扱う案件では、ここが品質の差になります。「モデルが途中で切り上げていないことを確認する仕組み」を入れた納品は、入れていない納品と見た目が同じで中身が違います。違いを説明できる人が単価を取ります。
3つ目は、出典の記録です。 最終 URL と HTTP ステータスがモデルに返るため、「どこから取ったか」を成果物に残す作りが標準で用意されています。 リサーチ代行や調査レポートの納品では、出典が辿れるかどうかが信頼の全部です。
コンテンツの題材としては、「ページングされるツールの扱い」が手薄です。 文脈長の話は飽和していますが、ツールが分割して返してきたとき誰が読み切る責任を持つのかという論点はあまり書かれていません。実際に長い PDF を食わせて、モデルが何区間で止まるかを測った記録は、それだけで記事になります。
注意点を1つ。 changelog にはオプション名が書かれていません。許可ホストやタイムアウトの指定方法は docs を見る必要があります。 本記事はオプション名を推測していません。