ChatGPT Work がログインの内側でも動くように — サインイン付きサイトでのタスク実行、Site tools(WebMCP)、ブラウザ拡張の4種追加
ChatGPT Work のブラウザが、サインインを必要とするサイトでもタスクを続行できるようになった。サイト側が認証を許可していれば ChatGPT がログイン画面を提示し、利用者が自分で資格情報を入力する。OpenAI はユーザー名とパスワードを見ることができず、モデルにも渡らず、学習にも使われず、保存もしないと明記している。対象は Plus / Pro。同日、デスクトップアプリ内蔵ブラウザで Web サイト側が提供するツールを使う Site tools(WebMCP)と、ブラウザ拡張の Edge / Brave / Opera / Vivaldi 対応も告知された。Site tools とクラウドブラウザのサインインは、いずれも Enterprise / Edu ワークスペースでは利用できない。
ニュース原文を読む ↗要約
2026-08-25 の ChatGPT リリースノートで、ChatGPT Work のブラウザがログインを必要とするサイトでもタスクを続行できるようになったことが告知されました。これまで AI エージェントの Web 操作は、事実上「ログインの外側」に限られていました。公開ページを読む、検索する、フォームに入力する。しかし業務の大半は、ログインの内側にあります。 その壁が、公式機能として越えられました。
動き方はこうです。タスクを頼むと、サイト側が認証を許可している場合に ChatGPT がログイン画面を提示します。資格情報を入力するのは利用者自身で、必要ならセキュリティコードも入れます。サインインが済めば ChatGPT が作業を続け、そのセッションはサインイン状態が維持されることがあるため、毎回ログインし直す必要はありません。パスワードマネージャーの利用にも対応しています。
セキュリティについて、公式は踏み込んだ書き方をしています。「ChatGPT はユーザー名とパスワードを見ることができず、モデルにも渡されず、学習にも使われない。保存もしない」。閲覧履歴は Settings > Cloud browser > Browser data から、全サイト分でも個別サイト単位でも削除できます。予約や決済のような影響の大きい操作の前には、必ず確認を求めるとされています。
公式が挙げる用途は、いずれも「これまで人がやるしかなかった手続き」です。引っ越し先の公共料金を調べて適切なプランに申し込む。DMV(陸運局)の予約を取る、パスポート更新の書類を埋める。保険のポータルでレントゲンや血液検査の費用を確認する。求人条件に合致し、かつ転職意欲のある人のプロフィールを探す。どれもログインの内側にあり、退屈で、しかし人が張り付く必要があった作業です。
同日、開発者向けの changelog では関連する2点が告知されています。1つは ブラウザ拡張の対応拡大で、Chrome に加えて Microsoft Edge / Brave / Opera / Vivaldi が対象になりました。5種すべてでタブメンションとブラウザ操作に対応し、Opera だけサイドチャットが使えません。設定は ChatGPT デスクトップアプリの Settings > Computer Use から行います。
もう1つが Site tools(WebMCP) です。デスクトップアプリの内蔵ブラウザ上で、Web サイト側が提供するツールを ChatGPT Work / Codex が使ってページを操作できるという仕組みで、名前のとおり MCP の考え方を Web サイトに持ち込んだものです。画面を見て要素をクリックする、という汎用の操作ではなく、サイト側が「このページではこの操作ができます」と定義したものを呼ぶ形になります。利用には GPT-5.6 Sol または GPT-5.6 Terra が必要で、GPT-5.6 Luna では使えません。
そして重要な制約が1つ。**Site tools もクラウドブラウザのサインインも、Enterprise / Edu ワークスペースでは利用できません。**サインイン機能の対象は Plus / Pro プランです。
何が変わったか
- ChatGPT Work のブラウザ(web / モバイル)が、サインイン必須のサイトでタスクを継続できる(Plus / Pro)
- 資格情報の入力はチャット欄ではなくサインインフロー上で行い、モデルには渡らず、保存も学習にも使われない(公式明記)
- サインイン状態はセッションをまたいで維持されることがあり、毎回の再ログインは不要。パスワードマネージャー対応
- クラウドブラウザの閲覧履歴を
Settings > Cloud browser > Browser dataから全体・サイト単位で削除できる - 予約・決済など影響の大きい操作の前には必ず確認を求める
- ブラウザ拡張が Microsoft Edge / Brave / Opera / Vivaldi に対応(Chrome と合わせて5種。タブメンションとブラウザ操作は全対応、Opera のみサイドチャット非対応)
- Site tools(WebMCP): デスクトップアプリ内蔵ブラウザで、サイト側が提供するツールを ChatGPT Work / Codex が利用。GPT-5.6 Sol / Terra が必要、Luna は非対応
- Site tools とクラウドブラウザのサインインは Enterprise / Edu ワークスペースでは利用不可
業務インパクト(一般企業向け)
この更新の本質は、「AI エージェントに業務システムの資格情報を通す」という構成が、公式機能として成立したことです。 これまでこの種の自動化は、RPA を組むか、API があれば API を叩くか、なければ諦めるかでした。**今後は「ChatGPT にログインさせる」という選択肢が現実に存在します。**そして、社員が個人の Plus / Pro アカウントでそれを始めることもできます。
だからこそ、Enterprise / Edu で使えないという制約の意味を正しく読む必要があります。 OpenAI がこの機能を Enterprise から外しているのは、組織の管理下にあるアカウントで無制限にこれをやらせるのは早い、という判断だと読めます。裏を返せば、個人契約の Plus / Pro を業務に使っている社員は、この機能を今日から使えるということです。会社としては使えないはずの機能が、社員の手元では動く。シャドー IT の典型的な入り口がここにあります。
情シスが取るべき最初の行動は、禁止でも許可でもなく、実態把握です。 業務システムのログイン履歴に、見慣れないブラウザやリージョンからのアクセスが出ていないか。とくにクラウドブラウザ経由の場合、アクセス元は利用者の端末ではありません。**IP ベースのアクセス制限をかけている社内システムは、そもそも弾かれるので影響がありません。**逆に、SaaS のように外部からアクセスできるものほど通ります。保護されている範囲と、そうでない範囲を先に線引きしてください。
「モデルに資格情報が渡らない」という公式の記述は、正確に理解して使う必要があります。 これは重要な保証ですが、セッションが確立した後、そのセッションでできることはモデルが行うという点は変わりません。パスワードが漏れないことと、ログイン後の画面で何をされるかは別問題です。**守られているのは認証情報であって、認可された操作の範囲ではありません。**この区別を曖昧にしたまま社内説明をすると、後で認識のずれが表面化します。
Site tools(WebMCP)は、中期的にはこちらのほうが影響が大きいかもしれません。 画面を見て操作する方式は、UI が変わるたびに壊れます。サイト側がツールを定義する方式なら、AI 向けの安定したインターフェースをサイトが提供することになります。自社が Web サービスを提供している側なら、「AI エージェントから使われる前提でツールを定義するか」が数年内の検討事項になります。 今はまだ GPT-5.6 Sol / Terra 限定で、Luna では動かない段階です。動向を追っておく価値はあります。
ブラウザ拡張の4種追加は、地味ですが統制の観点では効きます。 これまで「Chrome だけ管理しておけばよかった」構成が崩れます。**エンドポイント管理で拡張機能を統制している組織は、対象ブラウザの一覧を更新してください。**Brave や Vivaldi は管理外に置かれがちです。
副業・個人活用視点
Plus / Pro を個人で契約している人にとっては、今日から使える機能です。 そして正直なところ、これは「便利」の域を超えた変化です。ログインの内側にある退屈な作業——各種ポータルからの明細ダウンロード、予約フォームの入力、複数サイトを横断した価格や条件の確認——を、実際に任せられます。個人事業で一番削りたいのは、この種の「頭を使わないが時間だけ食う」作業です。
とはいえ、任せる範囲は自分で線を引いてください。 公式が挙げている例には保険ポータルや DMV が含まれますが、日本の環境で最初に試すなら、失敗しても取り返しがつくものからにすべきです。決済や予約の確定を伴うタスクは、確認プロンプトが入るとはいえ、慣れるまでは自分の手で最後を押すほうが安全です。金銭が動くものと動かないものを分けて考える、それだけで事故の大半は防げます。
クライアントワークをしている人は、顧客のシステムに ChatGPT でログインしないでください。 これは強めに書きます。自分のアカウントで自分の情報を扱うのと、預かった資格情報を第三者のクラウドブラウザに通すのは、まったく別の話です。顧客との契約でどう定められているかを確認せずに便利さで手を出すと、契約違反になりえます。 提案するにしても、顧客側が自分の環境で使う形にしてください。
支援メニューとしては、「AI にログインを任せてよい業務/任せてはいけない業務の切り分け」が単体で成立します。 多くの中小企業は、この線引きを自力ではできません。IP 制限がかかっているシステムはそもそも対象外である、SaaS は通る、決済を伴うものは別扱い——この整理を一枚の表にして渡すだけで、価値のある成果物になります。 技術的に難しい作業ではありませんが、判断の材料を持っている人が少ない領域です。
Site tools は、Web 制作を手掛けているなら先回りしておく価値があります。 サイト側が AI 向けにツールを定義する、という発想はまだ普及していません。**「AI エージェントから使える予約フォーム」「AI が読み取れる料金表」**といった提案は、今なら差別化になります。実装が本格化する前に、仕組みを理解しておくことがそのまま先行者利益になる領域です。