Web開発 2026年5月10日

Cloudflare Gateway (Cloudflare One)

ユーザー・デバイスから出るDNS / HTTP / L3-L4トラフィックをCloudflareエッジに集約し、宛先・コンテンツ・アイデンティティ・デバイスポスチャを軸に評価して通す/止める/書き換えるSWG(Secure Web Gateway)兼DNSフィルタである。

Gateway (Cloudflare One)

一行サマリ

ユーザー・デバイスから出るDNS / HTTP / L3-L4トラフィックをCloudflareエッジに集約し、宛先・コンテンツ・アイデンティティ・デバイスポスチャを軸に評価して通す/止める/書き換えるSWG(Secure Web Gateway)兼DNSフィルタである。

解決する課題(Why)

社内端末を境界の中に閉じ込めるレガシープロキシは、リモートワーク・SaaS中心の業務形態とは相性が悪い。ローカルブレイクアウト後のトラフィックを誰もログしていない、悪性ドメインへのDNS解決を止められない、退職者の端末から社外ネットワークへ機密ファイルが流れても気づけない、といった盲点が常態化している。Cloudflare Gatewayはこれをエッジ集約型のSASEモデルで置き換え、以下を解決する。

  • 全社のDNS / HTTP / L4トラフィックを単一の制御点で監視・制御。
  • マルウェア配布ドメイン・フィッシングサイト・カテゴリ違反サイトの遮断。
  • TLSを復号した上でのアンチウイルス・DLP・テナント制御・ブラウザ分離。
  • WARP配下デバイスからインターネット/プライベートネットワーク双方への通信ポリシー統一。
  • 監査・インシデント調査に耐えるリクエスト単位のログ保持。

主要機能(What)

DNS フィルタ

Cloudflare Resolver(1.1.1.1)を経由するDNSクエリをポリシー判定して解決をブロック・上書きする層である。WARPなしでも、DNS Locations(拠点IP登録)やルーターのDNS設定だけで導入できるため、Gatewayのなかで最も導入障壁が低い。

  • Action:Allow / Block / Override / Safe Search / YouTube Restricted Mode。
  • Selector:Domain / Host / Content Categories / Security Categories / Resolved IP / Source IP / Location / Query Record Type / User Email / User Group / Country。
  • Content Categories / Security Categories:CloudflareのIntelligenceフィードに基づく分類(成人向け / ギャンブル / マルウェア / フィッシング / 新規登録ドメイン 等)でドメイン群を一括制御。
  • DNS Locations:固定IPの拠点はそのIPからのクエリにポリシーを紐付け、ローミング端末はWARPで識別する。

HTTP インスペクション

WARP経由でTLSを復号し、HTTP/HTTPSペイロード単位の制御を行う層である。Cloudflareルート証明書、または企業所有の証明書を端末に配布することが前提となる。

  • 主要機能:URL / Host / File Type ブロック、Anti-Virus(アップロード・ダウンロードのスキャン)、DLP(クレジットカード番号・社内識別子等の流出検知)、Tenant Control(自社M365テナントのみ許可など)、Browser Isolation(リモートブラウザ隔離)、Quarantine、カスタムBlock Page。
  • Selector:URL / Domain / Host / HTTP Method / File Type / Application / Content Categories / Country / Source IP / User / Group / Device Posture。
  • Browser Isolation(RBI)と組合せると、未分類サイトを「読めるが貼り付け・ダウンロード不可」のRead-onlyモードで開く運用が可能。

Network ポリシー(L3-L4)

HTTPに収まらないトラフィック(SSH / RDP / SMTP / 任意のTCP・UDP)を制御する層である。Magic WAN / GRE / IPSec / WARPで集約したパケットをIP・ポート・プロトコル・SNI単位で評価する。

  • Action:Allow / Block / Network Override(宛先IP・ポートの書き換え)。Audit SSHはDeprecatedで、SSH監査はAccess for Infrastructureに移行している。
  • Selector:Source/Destination IP・Port、Protocol、SNI、Application、Content Categories、Virtual Network、User、Group、Device Posture。
  • Cloudflare Tunnelで公開した社内ネットワーク(Private Network)への到達制御も同じレイヤで書ける。

WARP クライアント

Gatewayのフル機能(HTTP復号・Device Posture・User identity)を引き出す前提となるエンドポイントエージェントである。MDM配布(Intune / Jamf / Kandji)でデバイス登録し、Splitトンネルで「会社が見たいトラフィック」だけをCloudflareに送る運用が現実的である。

  • Device Postureチェック:OSバージョン / ディスク暗号化 / EDR稼働 / 証明書存在 / シリアルナンバーリスト など。
  • User identity:Cloudflare Accessで認証したIdPユーザーをそのままGatewayポリシーのSelectorに利用できる。
  • Split Tunnel:Include / Excludeモードで、業務SaaSのみ流す/プライベート帯域は除外、といった設計が可能。

Logs

すべてのDNS / Network / HTTPリクエストはGateway Activity Logに記録される。Logpushを使えばS3 / R2 / Splunk / Datadog / Sentinelに継続転送でき、SIEM連携が成立する。Free / Standardはダッシュボード上での保持期間が短く、長期保管はLogpush(Enterprise)が前提となる。

アーキテクト視点:いつ選ぶか

適しているシーン

  • VPN撤廃・SASE移行の文脈で、SWG / DNSフィルタを単一ベンダーで揃えたい中小〜中堅企業。
  • 「悪性ドメインを止めたい」だけが先に欲しいケース(DNS Locations + Content Categoriesで即日導入)。
  • 全社員にWARPを配り、Tunnelで社内アプリも公開している組織。Access(誰が)+ Tunnel(どこへ)+ Gateway(何を)が一気通貫で書ける。
  • Cloudflareエッジを既にCDN / WAFで使っている組織にとって、ログ・アイデンティティ・証明書配布の運用基盤を流用できる。
  • 50ユーザー以下のスタートアップで、コストゼロでSWGを導入したいケース。

適していないシーン

  • ZscalerやNetskopeに既に大規模投資済みで、CASB / SSPM / Advanced DLP / UEBAなどフル機能を業務要件として使い倒している組織。CloudflareのDLP・CASB相当機能はEnterprise領域では追従途上である。
  • オンプレミスのレガシーWindowsアプリ群が、TLS復号と相性の悪い独自プロトコルで通信しているケース。HTTPインスペクションは個別にBypass設計が必要。
  • WARPを配布する運用体制(MDM・端末ポリシー)がない組織。DNSフィルタ単独運用で止めるのが現実解。
  • 政府・防衛系で「特定国の事業者にトラフィックを集約してはならない」という制約がある場合。

競合・代替

観点Cloudflare GatewayZscaler ZIANetskope SWGCisco Umbrella
出自CDN / Anycastネットワーク純血SASE / SWG専業CASBから拡張したSSEDNSフィルタ(旧OpenDNS)から拡張
DNSフィルタ標準(無料枠あり)別モジュール別モジュール本職
HTTPインスペクション標準・TLS復号対応高機能・成熟高機能・成熟SIG add-on
L4 / Network統合(Magic WAN連携)専用ZPA / Cloud ConnectorNewEdgeで対応SIG / Tunnel
CASB / Advanced DLP追従途上強力最強クラス中位
Browser Isolation標準同梱(CloudflareのRBI)別ライセンス別ライセンス別ライセンス
価格50ユーザー無料 / $7〜高価(要見積もり)高価(要見積もり)$2.20〜(DNS Essentials)
強みエッジ統合・Access/Tunnelとの結合・無料枠エンタープライズでの成熟・運用ノウハウデータ中心SSE・CASB成熟度DNSフィルタの精度・既存Cisco資産との相性
弱み大規模CASB / UEBA要件は弱い高コスト・複雑高コスト・PoP網はCloudflareに劣るDNS主体でHTTP / L4は後発

CloudflareはAccess / Tunnel / Gateway / Browser Isolation / DLPを単一プレーンで束ねるアーキテクチャ的なシンプルさが最大の差別化要因である。逆にZscaler / Netskope水準の成熟したCASB・SSPMが業務要件の中核なら、現時点では併用または代替が妥当である。

料金

  • Free(Zero Trust Free):50ユーザーまで。DNSフィルタ・HTTPインスペクション・Network ポリシー・WARP・基本Browser Isolation(限定的)が含まれる。Activity Logのダッシュボード保持期間は短い。
  • Standard(Pay-as-you-go):$7/ユーザー/月程度から、ユーザー数に応じた従量課金。51ユーザー目以降が課金対象、Free機能の上限拡張・SLA向上が中心。
  • Enterprise:年間契約。Logpush、Advanced DLP、CASB、SCIM強制再評価、User Risk Score、Magic WAN統合、専用PoP・専用IP、サポートSLAなど。SaaS全社展開や監査要件のある組織はここを前提に設計する。

Gateway / Access / Tunnelは同じZero Trustライセンスにバンドルされており、「Gatewayだけ」「Accessだけ」を別契約する形にはならない。50ユーザー無料枠を最大限活かし、必要になった機能(Logpush・DLP)でEnterpriseに上がる、という段階導入が現実的である。

CLI / IaC 操作例

Terraform(cloudflare provider v5)

# DNS: マルウェア・フィッシングカテゴリをブロック
resource "cloudflare_zero_trust_gateway_policy" "block_malware_dns" {
  account_id  = var.account_id
  name        = "Block malware/phishing (DNS)"
  description = "Security categories block at DNS layer"
  precedence  = 1000
  enabled     = true
  action      = "block"
  filters     = ["dns"]
  traffic     = "any(dns.security_category[*] in {68 80 178 83})"
}

# HTTP: 業務時間外にSNS系をBrowser Isolationへ
resource "cloudflare_zero_trust_gateway_policy" "isolate_social" {
  account_id  = var.account_id
  name        = "Isolate social media"
  precedence  = 2000
  enabled     = true
  action      = "isolate"
  filters     = ["http"]
  traffic     = "any(http.request.uri.content_category[*] in {5})"
  identity    = "any(identity.groups.name[*] in {\"general-staff\"})"
}

# Network: 社外SSHを原則ブロック、踏み台のみ許可
resource "cloudflare_zero_trust_gateway_policy" "block_egress_ssh" {
  account_id = var.account_id
  name       = "Block egress SSH"
  precedence = 3000
  enabled    = true
  action     = "block"
  filters    = ["l4"]
  traffic    = "net.dst.port == 22 and not(net.dst.ip in {203.0.113.10})"
}

WARP デバイス登録(MDM経由の例)

# macOS(Jamf / Kandjiでconfig profile配布が本筋。手動検証用)
sudo warp-cli registration new --team-name acme

# 接続・ステータス確認
warp-cli connect
warp-cli status

# Gateway DoH接続のみ使う場合(HTTP/L4は流さない)
warp-cli mode doh

DNS Location(拠点IPベース)の登録

オフィス固定IPからのDNSクエリにポリシーを当てる場合は、Zero Trustダッシュボード「Gateway → DNS Locations」で拠点IPv4/IPv6を登録するか、APIでPOST /accounts/{id}/gateway/locationsを叩く。

制限・注意点

  • HTTPインスペクションはCloudflareルート証明書(または持ち込み証明書)の端末配布が前提である。BYOD・非管理端末ではDNS / Networkまでに留めるのが現実解。
  • 一部アプリ(Apple Push、銀行系、証明書ピン留めSDK)はTLS復号と相性が悪く、ホスト単位でDo Not Inspect(バイパス)設定が必要。
  • Logpushによる長期ログ転送はEnterprise機能であり、Free / Standardはダッシュボード保持に依存する。コンプライアンス要件があるなら最初からEnterprise前提で設計する。
  • Network ポリシーのprecedence管理はTerraform provider v4にハッシュ計算起因の制約があり、v5への移行が推奨される。
  • Cloudflare AccessやTunnelは前提として別記事を参照。Gatewayは「外向きトラフィックの制御」、Accessは「内向きアプリへの認可」、Tunnelは「内部の到達経路」と役割が分かれている。
  • 50ユーザーFreeはAccess / Gateway / Tunnel合算の制限であり、Gateway単独の枠ではない点に注意。
  • WARPのSplit Tunnelを誤設定すると業務SaaSがCloudflareを経由しない(=ポリシーが効かない)状態になる。Includeモード運用とテストが必須。

参考リンク


参照日: 2026-05-03